
沖縄本島北部に位置する今帰仁城跡(なきじんじょうあと)は、かつて北山王の居城として栄えた歴史あるグスクです。
中山による統一以前、三山時代の激動の歴史を物語るこの城跡は、2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つとして世界遺産に登録されました。
今帰仁城跡の最大の魅力は、自然の地形を生かして築かれた、優美な曲線を描く石垣です。
1.5kmにおよぶ壮大な城壁、古生代石灰岩を使った堅牢な石積み技術、そして首里城にも匹敵する規模を誇る城跡は、当時の琉球文化の高さを感じさせます。
この記事では、今帰仁城跡の歴史的背景や見どころなどの情報を、初めて訪れる方にもわかりやすくご紹介します。
壮大な自然と歴史が織りなす今帰仁城跡の魅力に、ぜひ触れてみてください。
今帰仁城跡の特徴

今帰仁城は、琉球王国が中山によって統一される前の三山時代に、北山王の居城として使われていたお城です。
自然の形をそのまま活かして造られた、曲線状の美しい石垣が特徴的です。
優美な曲線を描く石垣
今帰仁城は、外郭を含めて7つの郭(くるわ)から構成されています。
最大の特徴は、地形の起伏を生かしながら優美な曲線を描く石垣にあります。これは当時国交があった中国文化の影響を受けたものと考えられています。
城壁の総延長は約1.5km、最も高い場所では高さ約8mにも達し、首里城に次ぐ大きさを誇ります。
石垣に古生代石灰岩を使用
石垣に使われているのは、敷地内で採れる「古生代石灰岩」と呼ばれる非常に硬い石材です。
自然の形をそのまま活かして積み上げる、野面積みという伝統的な技法が採用され、石の自然な形を生かして造られています。
今帰仁城跡の歴史

今帰仁城が建てられた正確な時期は不明ですが、発掘調査の結果、13世紀後半頃にさかのぼると考えられています。
14世紀中頃には、城の中心部である主郭が石垣によって整備され、15世紀前半にはさらに城域が拡大。主郭を含む大隈や志慶真門郭など、10の郭からなる大規模な城が築かれたと伝えられています。
1322年頃から1429年までの時期、沖縄本島は北山・中山・南山の三大勢力に分かれて争った「三山時代」と呼ばれる戦国時代を迎えました。
今帰仁城は、その三山のひとつ北山王の居城として、沖縄本島北部から奄美地方までを支配していました。
北山王は中国との貿易も盛んに行っていましたが、1416年、中山を支配していた尚巴志(しょうはし)の攻撃によって北山は滅亡。今帰仁城も陥落し、北山王統は断絶します。
その後、琉球王府は北部地域の統治を強化するため、監守と呼ばれる役人を今帰仁城に派遣し、居城として利用しました。
しかし、1609年の薩摩軍の琉球侵攻によって、今帰仁城は炎上しました。1665年には、最後の監守も城を離れることになります。
18世紀初頭には、今帰仁城跡に「火神の祠」が建てられ、以降、城跡は地域の人々にとって精神的な拠り所として大切にされ続けています。
今帰仁城跡の見どころと楽しみ方

今帰仁城跡を訪れたらぜひチェックしてほしい見どころを紹介します。
御内原
御内原は、今帰仁城の正殿裏に広がっているエリアです。
ここは国王やその家族、そして王家に仕える女官たちが生活していた場所で、王家の男性以外は立ち入りを許されない場所でした。
御内原の北端からは、城内随一と言われる素晴らしい眺望を楽しむことができます。
馬の訓練場だった大隈の石垣をはじめ、今帰仁村から伊平屋島などの島々を一望できます。
天気の良い日には、遠く与論島の姿まで確認できることもあります。
平郎門
平郎門は、今帰仁城の正門にあたる重要な建造物です。
現在の平郎門は1962年に修復されたもので、かつては城の要となる門でした。
門の左右には狭間と呼ばれる小窓があります。また、天井には大きな一枚岩が据えられており、堅牢な造りとなっています。
志慶真門郭
平郎門を抜けて奥に進むと現れる志慶真門郭。
かつて城主の家臣たちが暮らしていたとされるこのエリアは、今では隠れた絶景スポットになっています。
堂々たる石垣と広がる青空、そして遠くに見える森と海。まるで絵画のような風景に、思わず息をのむことでしょう。
火の神の祠
城跡の左手には、かつて今帰仁ノロが住んでいた場所とされる、今帰仁ノロ殿内火の神の祠が静かに佇んでいます。
木々の間を進んだ先に現れるその姿は、神聖な空気に包まれ、訪れる人に深い感動を与えます。
自然と信仰が共存する今帰仁城ならではの場所です。
歌碑
今帰仁城の大庭には、見逃せない歌碑もあります。
北山王の側室で、絶世の美女として知られる志慶真乙樽にまつわる琉歌が刻まれています。
彼女は、王と王妃の間に生まれた王子を、自らの命を懸けて守り抜いたと伝えられています。
その深い慈愛の心から、後に今帰仁御神と呼ばれるようになり、彼女をたたえる琉歌が多くの人々に親しまれました。
頂上からの絶景
城跡の頂上に立つと、見渡す限りの海と水平線が広がる圧巻の景色が迎えてくれます。
晴れた日には伊是名島、伊平屋島、古宇利島、そして沖縄本島最北端の辺戸岬までも見渡すことができるでしょう。
昼間の明るい景色も魅力ですが、夕暮れどきに染まる空の色も格別です。ベンチに座り、心地よい風を感じながら、静かな時間を過ごしてみてください。
ハンタ道を歩く
今帰仁城跡と今泊集落を結ぶハンタ道は、かつて祭事にも使われた歴史ある古道です。
道中には出城跡とされるミームングスクや、大きなガジュマルの木などがあります。
木々に囲まれた亜熱帯の雰囲気の中、軽いトレッキングを楽しむことができます。
道がぬかるんでいる日もあるので、歩きやすい服装と靴で行くのがおすすめです。
無料ガイドで歴史を深堀り
今帰仁城跡では、ボランティアによる無料ガイドツアーを利用することができます。
チケット売場で申し込み、空いているガイドさんがいればその場ですぐ案内がスタートします。
今帰仁城跡の成り立ちや拝所にまつわる話など、約1時間ほど詳しく教えてくれます。
ただ見て歩くだけでは分からない奥深い歴史に触れたい人には、ぜひおすすめしたいサービスです。
今帰仁城の基本情報

住所 | 〒905-0428 沖縄県国頭郡今帰仁村今泊5101番地 |
電話番号 | 0980-56-5767 |
営業時間 | 【1~4月、9~12月】 8:00~18:00(入場は17:30まで) 【5~8月】 8:00~19:00(入場は18:30で) |
定休日 | 年中無休 |
入場料 | 【個人】 大人600円 中高生450円 小学生以下無料 【団体10名以上】 大人480円 中高生360円 小学生以下無料 ※今帰仁城趾・今帰仁村歴史文化センター統一チケット |
アクセス | 那覇空港から車で約2時間45分 バス:今帰仁村字今泊今帰仁城趾入口バス停下車徒歩15分 |
駐車場 | 無料(約320台) |
Googleマップ | https://maps.app.goo.gl/HnFm7uEJ2oyRF7eE8 |
公式サイト | https://www.nakijinjoseki-osi.jp/ |
世界遺産 今帰仁城跡まとめ
今帰仁城跡は、沖縄の豊かな自然と、琉球王国時代の歴史を今に伝える貴重な場所です。
自然の地形を生かして築かれた美しい石垣や、広々とした城域、そして随所に残された祈りの跡からは、当時の人々の思いが静かに伝わってきます。
御内原や平郎門、志慶真門郭、火の神の祠といった見どころをめぐると、王家や人々の暮らし、信仰の息づかいを身近に感じることができるでしょう。
今帰仁城跡は、ゆったりとした時間の中で、歴史や自然、そして祈りの文化にそっと寄り添える場所です。
ぜひ、心静かにこの地を歩きながら、遠い昔に思いを馳せるひとときを過ごしてみてください。