ほのかな苦味と、深い味わいが魅力の沖縄の黒糖。そのままつまんでも、料理に使ってもおいしい黒糖ですが、どこで、どんなふうに作られているのかまでは、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
「沖縄黒糖」と呼ばれる黒糖は、沖縄県の8つの離島で作られています。島が変われば、味も見た目もそれぞれ違うんです。
この記事では、沖縄の黒糖の産地や作り方、選び方、楽しみ方を、沖縄県黒砂糖協同組合や農林水産省などの情報をもとにまとめました。
この記事のポイント
- 沖縄の黒糖は、さとうきびの搾り汁を糖みつごと煮詰めて固めた砂糖です。
- 沖縄の黒糖の主な産地は、伊平屋島や波照間島など8つの離島です。
- 沖縄黒糖は、島ごとに味や色、粒の形に違いがあります。
- 黒糖は糖みつを残して作るため、上白糖にはほとんど含まれないカリウムやカルシウムを含んでいます。
- 黒糖の原材料名は「さとうきび」だけで、加工黒糖とはここで見分けられます。
沖縄の黒糖とは?
沖縄の黒糖は、さとうきびの搾り汁をそのまま煮詰めて、冷やし固めた砂糖です。原材料はさとうきびだけ。搾り汁に含まれる成分がそのまま残るので、ほのかな苦味のある、独特の深い味わいがあります。
「黒糖」と「黒砂糖」は呼び方が違うだけで、同じものを指します。伊平屋島や波照間島など沖縄県の8つの離島で作られる、さとうきび100%の黒糖が「沖縄黒糖」です。
「沖縄黒糖」という名称は、2025年11月に国の地理的表示(GI)に登録されました。GIは、産地と結びついた特性をもつ産品の名称を、国が知的財産として保護する制度です。登録の内容では、沖縄県内で育ったさとうきびだけを原料に、搾り汁をそのまま煮詰めて作ることが定められています。
参考:農林水産省|第172号:沖縄黒糖
黒糖と白砂糖の違い
黒糖と白砂糖のいちばんの違いは、作る途中で「糖みつ」を取り除くかどうかです。糖みつとは、搾り汁に含まれる糖分以外の成分を含んだ蜜のこと。これを残したまま固めたものを含みつ糖(含蜜糖)、取り除いて精製したものを分みつ糖(分蜜糖)と呼びます。
| 種類 | 作り方 | 主な砂糖 |
|---|
| 含みつ糖 | 搾り汁を糖みつごと煮詰めて固める | 黒糖 |
| 分みつ糖 | 搾り汁から糖みつを取り除いて精製する | 上白糖、グラニュー糖、三温糖、氷砂糖 |
糖みつを残したまま作る黒糖には、上白糖にはほとんど含まれないカリウムやカルシウム、鉄などのミネラルが含まれています。
| 成分(100gあたり) | 黒砂糖 | 上白糖 |
|---|
| エネルギー | 352kcal | 391kcal |
| 炭水化物 | 90.3g | 99.3g |
| カリウム | 1,100mg | 2mg |
| カルシウム | 240mg | 1mg |
| 鉄 | 4.7mg | 微量 |
エネルギーや炭水化物の量には大きな差がなく、成分の約9割は炭水化物です。
参考:沖縄県黒砂糖協同組合|沖縄黒糖の作り方
参考:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
沖縄の黒糖の歴史
沖縄の黒糖づくりは、約400年前の1623年に始まったとされています。琉球王国の士族・儀間真常(ぎましんじょう)が、明(現在の中国)へ渡る使節団に製糖法を学ばせたのがきっかけです。
その後、黒糖づくりは王国の財政を支える産業に育ちました。当時はさとうきびの栽培が一部の地域に制限されていましたが、1888年に制限がなくなると、沖縄本島周辺の離島や宮古・八重山でも生産が本格化します。
かつて沖縄県内に数百あった黒糖工場は、精製糖をつくる近代的な工場の建設が進むなかで、閉鎖や精製糖への転換によって少しずつ姿を消していきました。そのなかで黒糖づくりが離島に残ったのは、さとうきびの鮮度を保ちやすく、島の生産規模にも合っていたため。黒糖づくりが、島の産業の柱になっていたことも理由とされています。
沖縄黒糖の産地
沖縄黒糖の産地は、沖縄県内の8つの離島です。沖縄本島の北西に浮かぶ島から宮古・八重山まで、小さな島々に工場があります。
- 伊平屋島(いへやじま)
- 伊江島(いえじま)
- 粟国島(あぐにじま)
- 多良間島(たらまじま)
- 小浜島(こはまじま)
- 西表島(いりおもてじま)
- 波照間島(はてるまじま)
- 与那国島(よなぐにじま)
国内で作られる黒糖の約9割を、沖縄県産が占めています(2023年時点)。8つの島で作られた黒糖の量(産糖量)は、2025年から2026年の製糖期で8,720トンでした。沖縄県内のさとうきびのうち黒糖になるのは5〜6%ほどで、大半は上白糖などの原料(粗糖)になります。
8つの島のなかには、2011年に黒糖づくりが始まった伊江島のような新しい産地もあります。
8つの島ごとの黒糖の特徴
黒糖の製法は、8島でほとんど変わりません。それでも、土壌や気候、さとうきびの育て方の違いが、味や色、食感にはっきりあらわれます。
| 島 | 黒糖の特徴 |
|---|
| 伊平屋島 | 甘さの後に、ほどよい苦みと塩気が残る。大きくて硬い粒。 |
| 伊江島 | 甘さは控えめで、塩気を感じる味。色が白っぽく、粒は小さめ。 |
| 粟国島 | 苦みやえぐみが控えめ。あっさりした甘さと塩気の釣り合いがよい。 |
| 多良間島 | 甘みがしっかり強い。濃い茶色の長方形をした、硬めの粒。 |
| 小浜島 | 甘さも苦みもほどほどで、後味がさっぱりしている。チョコレートに似た見た目。 |
| 西表島 | コクが深く、甘みも強い。塩気や苦みのクセは少なめ。8島のなかでは色が白い。 |
| 波照間島 | 旨みと甘みが凝縮され、コクが深い。大粒で、シャリっとした食感。 |
| 与那国島 | 甘さは控えめ。8島のなかでは柔らかい。明るい黄土色で、キャラメルのような形。 |
沖縄黒糖の作り方
沖縄黒糖づくりで大切にされているのは、さとうきびの鮮度です。刈り取ったさとうきびは時間がたつほど質が落ちるため、工場ではその日に使う分だけを収穫して加工します。工場が動くのは、さとうきびが糖分をいちばん蓄える12月から4月にかけてです。
さとうきびから黒糖ができるまでの工程
黒糖は、収穫から成型まで大きく6つの工程でできあがります。島によって細かな違いはありますが、流れは次のとおりです。
- その日に使う分だけさとうきびを刈り取り、トラックで工場へ運びます。
- さとうきびを短く切りそろえ、圧搾機に何度か通して汁を取り出します。
- 搾った汁から不純物を沈殿させ、濾過して取り除きます。
- きれいになった汁を段階的に加熱し、水分を飛ばして濃くしていきます。
- かき混ぜて空気を含ませながら冷やしていくと、黒糖のできあがりです。
- 固まりきる前のやわらかいうちに、形を整えたり箱に詰めたりします。
搾ったあとに残る繊維「バガス」は、さとうきびの重さの約4分の1。8島のうち7島の工場ではボイラーの燃料として使われ、取り除いた不純物も堆肥として畑に戻されます。
沖縄の黒糖の選び方
沖縄の黒糖を選ぶときに見たいのは、原材料表示、パッケージのマーク、形の3つです。売り場には黒糖によく似た見た目の商品も並んでいますが、袋の裏と表を確かめれば迷いません。あとは、そのまま食べるのか料理に使うのかで、形を選ぶだけです。
黒糖と加工黒糖の見分け方
黒糖かどうかは、袋の裏の原材料名で見分けられます。黒糖の原材料名は「さとうきび」だけ。粗糖(白砂糖の原料)や糖みつが書かれていれば、黒糖とは別の商品です。
| 種類 | 原材料 | 特徴 |
|---|
| 黒糖(黒砂糖) | さとうきび | 搾り汁をそのまま煮詰めて固めたもの |
| 加工黒糖 | 黒糖、粗糖、糖みつなど | 黒糖に粗糖や糖みつを混ぜて加工したもの |
| 加工糖 | 粗糖、糖みつなど | 黒糖は使われていない |
商品名に「黒糖」「黒砂糖」と表示できるのは、さとうきびの搾り汁を、糖みつを分けずに煮詰めて作ったものだけです。
加工黒糖は品質が安定していて、粉末や成形されたものなど種類も豊富。どれが良い悪いということはありません。黒糖そのものの風味を味わいたいなら、原材料名が「さとうきび」のものを選びましょう。
沖縄黒糖のマークの種類
黒糖を選ぶときに目印にしたいのが、太陽とさとうきびをデザインした丸い「沖縄黒糖マーク」。沖縄黒糖を100%使った商品に付けられるマークです。売り場で見かけたら、袋の裏の原材料名とあわせてチェックしてみてください。
沖縄黒糖は2006年に、原料と製法へのこだわりを示す地域食品ブランドの表示基準「本場の本物」にも認定されています。名前そのものも、2007年に地域団体商標として登録された地域ブランドです。
参考:沖縄県黒砂糖協同組合|商標について
用途に合った黒糖の形
市販されている黒糖は、主に粒状と粉末状の2タイプ。そのまま食べるなら粒状、料理やお菓子に使うなら粉末状と、使い道で選ぶのがおすすめです。
- 粒状(かち割り)は、ひと口でつまめる大きさ。お茶うけにぴったりです。
- 粉末状は、料理やお菓子の材料に加えやすく、使い勝手のよいタイプです。
粒状の黒糖は、形や硬さが島によって違うのもおもしろいところ。硬めが好きなら多良間島や伊平屋島、柔らかめなら与那国島というように、食感で選ぶのもひとつの方法です。
沖縄黒糖の楽しみ方
沖縄黒糖の楽しみ方は、そのままお茶うけにするか、料理やお菓子に使うかの大きく2つ。砂糖でありながら、それだけで食べておいしいのが黒糖ならではの魅力です。
お茶うけで味わう
いちばん手軽なのは、粒状の黒糖をそのままつまむ食べ方です。沖縄では昔から、家事や畑仕事の合間にひと粒食べて一息ついたり、訪ねてきた人にお茶うけとして出したりと、暮らしのなかで親しまれてきました。
- 粒のまま、お茶のおともに
- お湯に溶かして、昔ながらの飲み物「サーターユー」に
サーターユーは、畑仕事の合間にも飲まれてきた沖縄の素朴な一杯。ひと休みしたいときに、まずはひと粒から試してみてはいかがでしょうか。
料理やお菓子で味わう
黒糖は、沖縄の郷土料理や伝統菓子に欠かせない調味料。料理には深みとコクを、お菓子には香ばしい香りとほのかな苦味を加えてくれます。
- 豚の角煮にあたる煮込み料理「ラフテー」
- 緑豆と押し麦を黒糖で煮た、沖縄のぜんざい「あまがし」
- 黒糖入りの生地を焼いて巻いたお菓子「ちんびん」
- ドーナツのような丸い揚げ菓子「サーターアンダギー」
ふだんの家庭料理なら、肉じゃがやかぼちゃの煮物に使うのもいいですね。黒糖を溶かした黒みつは、アイスクリームやヨーグルトにかけたり、きな粉と合わせたりと、アイデア次第で楽しみ方が広がるのも魅力です。
沖縄の黒糖に関するよくある質問
黒糖と白砂糖は何が違うのですか? 作る途中で、糖みつを取り除くかどうかが違います。黒糖は搾り汁を糖みつごと煮詰めて固めた砂糖で、白砂糖は糖みつを取り除いて精製した砂糖。糖みつを残したまま作る黒糖には、カリウムやカルシウムなどのミネラルが多く含まれています。
黒糖と加工黒糖はどう見分ければいいですか? 袋の裏の原材料名を見れば見分けられます。黒糖なら、原材料名は「さとうきび」だけ。加工黒糖は黒糖に粗糖や糖みつを混ぜたもので、原材料名にそれらが並びます。
沖縄黒糖はどこで作られていますか? 伊平屋島、伊江島、粟国島、多良間島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島の8つの離島です。この8島で作られる、さとうきび100%の黒糖が「沖縄黒糖」。島ごとに、味や色、食感に個性があります。
沖縄の黒糖はいつ作られていますか? 黒糖の工場が動くのは、12月から4月にかけて。さとうきびが糖分をいちばん蓄える時期です。刈り取ったさとうきびは時間がたつと質が落ちるため、その日に使う分だけを収穫して加工しています。
まとめ
沖縄の黒糖は、さとうきびの搾り汁を糖みつごと煮詰めて固めた、とてもシンプルな砂糖です。主な産地は8つの離島。同じ作り方でも、島が変われば味も見た目も変わるのが、沖縄の黒糖のおもしろいところです。
お店で選ぶときは、袋の裏の原材料名が「さとうきび」だけになっているかを確かめてみてください。そのままつまむなら粒状、料理やお菓子に使うなら粉末状がおすすめです。
まずは気になる島の黒糖をひとつ手に取って、味わってみてくださいね。島ごとの違いがわかってくると、黒糖選びがもっと楽しくなりますよ。